骨化性筋炎

先日、肉ばなれが1月以上たっても治らないという患者さんが来ました。重度の肉ばなれなのかな?と思ったのですが、整骨院では筋肉のへこみ(筋肉組織が切れて重症になるほど凹みが大きくなる)がほとんどないことから、軽症の肉ばなれですと言われ、回復に努めていたらしいのですが、1月以上たつのに治りが遅く、歩くのにも痛く、階段は手すりにつかまってやっと上がり降りできるレベル。これはおかしい!この時点で考えられるのが、無理して動いていて筋肉が再生しずらくなっていたり、見た目以上に重症なのかもしれないという事です。

話をよく聞き、触診、実際に鍼を刺すことで分かったことが、

①肉ばなれを起こしたのが、大腿直筋ではなくその下の中間広筋でした。大腿四頭筋の場合、表層の大腿直筋を肉ばなれ起こすことが多く、切れた繊維のへこみが感じ取れるのですが、中間広筋の場合、大腿直筋の深層にある為、へこみが感じ取れなかったと考えられます。その為、重度か中程度の肉ばなれが軽症に間違われたのです。これは鍼を刺すことでわかります。痛めている筋肉は筋性防御などで緊張が強くなり、刺鍼時の鍼先の抵抗でわかります。大腿直筋は柔らかく、中間広筋は以上に緊張していました。

中間広筋の骨化性筋炎が起こっていると考えられる。単純に中間広筋の肉ばなれだけで、これだけ治りが遅いのは説明できません。問診した際に「肉ばなれになった後も内出血の後も出なく、見た目は普通だった」とのこと。これは筋肉内で起こった出血が、皮下に散らないで筋肉内にとどまったという事です。これで起こるのが骨化性筋炎です。

骨化性筋炎とは、

骨化性筋炎とは、肉ばなれや打撲で筋肉を損傷した際に起こる出血が、筋肉内で血腫をつくり、血腫に含まれるカルシウムが骨に似た組織になることを言います。筋肉内で硬い骨のような組織ができるのですから、当然その筋肉は伸ばしたり負荷をかければ痛みます。骨化性筋炎が起こる原因の一つに初期治療があります。受傷早期はRICE処置(Rest 患部を安静に保つ Ice 患部を冷やす Compression 患部を圧迫する Elevation 患部を挙げる)をしっかり行えば骨化性筋炎にはなりにくいのですが、損傷後も動き回ったり、RICE処置をせず放置すると筋肉内で出血が増えるので、骨化性筋炎になる確率が高まります。損傷が重度だったり、深部であると血腫ができやすく、RICE処置を行っても骨化性筋炎になることもあるので、絶対にならなくするのはRICE処置だけでは難しいでしょう。*受傷後、2日ぐらいまでに鍼施術を行えば骨化性筋炎は防げると思います。鍼施術は患部の内出血を回収するのと、筋膜を貫くことで血腫を溜りにくくすると考えられます。

*骨化性筋炎以外に重症化する例があります。それはコンパートメント症候群です。これは同じく肉ばなれや打撲で筋肉内で出血が起こり、筋肉を分ける区画内で出血がたまることで内圧が高まり、大きな血管が圧迫されてしまい、患部から末端にかけて血液が流れなくなることで、循環不全が起こる症状です。この場合、早急に内圧が下がるようにメスで皮膚と筋膜を切ります。コンパートメント症候群も絶対に防ぐことはできませんが、RICE処置で起こりにくくすることはできますので、肉ばなれや打撲の際は必ず行いましょう。

骨化性筋炎の鍼灸治療

骨化性筋炎のの具体的な治療方法は、直接損傷した筋肉に刺鍼します。本数は1センチ間隔~3センチぐらいで、筋緊張が強く痛みの強い部分を密にした方法が効率よく改善します。置鍼は35分から40分程度で電気鍼やお灸は必要ありません。冬なら赤外線があればよいでしょう。損傷した筋肉に刺鍼すると患部の血管拡張が起こり血腫などの回収が進むのと、筋肉自体の緊張が緩和されます。デメリットとして終わった後は1日くらい筋肉痛のような感覚になりますが、筋肉痛は筋肉が修復している合図ですので問題ありません。筋肉痛が治まったらストレッチやリハビリを行います。鍼施術と運動、ストレッチを繰り返すことで効的に改善します。上記した患者さんは、鍼施術を行うたびに出来る動きが増えるので3回ぐらいで階段の上り下りが普通に、5回ぐらいで軽いジョグ程度には走れるようになりました。初期治療を鍼で行えばこんなにかからなかったのですが、鍼灸はあまり認知されていませんし、第一選択に上がりにくいので仕方ありません。これを見た方は肉ばなれは鍼灸を第一選択に入れてみてください。効率的ですよ!